まちの駄菓子屋さんに小学生がいる、この写真。
どこだと思いますか?
ここはサービス付き高齢者向け住宅「
銀木犀」(ぎんもくせい)の浦安です。
高齢者向けの住宅の1階に、駄菓子屋さんを併設しています。
2015年に「アジア太平洋高齢者ケア・イノベーション・アワード」の
Residential Aged Care部門で最優秀賞を受賞した話題の事業所です。
8月1日に開催された「リデザイング・トーキョー:都市デザインとコミュニティーの健康」でも2人の登壇者が「銀木犀」の事例を取り上げていました。
「銀木犀」は、サービス付き高齢者住宅(通称:サ高住)です。
高齢者が自分の部屋を借りて家賃と共益費、食費、安否確認、
生活相談サービスにかかわる費用を月ごとに支払って生活しています。
「銀木犀」の1階の食堂は地域に開かれた共有スペース。
自由に出入りできる自動ドアから、次から次へと子どもたちがやってきます。
駄菓子屋さんで買ったお菓子を食べながらカードゲームをしたり、
本を読んだり、おしゃべりをしたりしていました。まるで児童館のよう!
高齢者住宅の中に、子どもたちの「たまり場」があります。
駄菓子屋さんの店番は、「銀木犀」の入居者やスタッフが担当。
この方は、地域の住民で4日前から店番として仲間入りしました。
「昔、そろばんをやっていたから暗算はできるんだけど、まだお菓子の値段が覚えられなくて。子どもたちの方がよく知っているから聞くのよ」と言う、その表情は実にイキイキとしています。
駄菓子屋があることで、子どもと高齢者が自然に会話できます。
認知症の入居者が店番をすることもありますが、お会計が間違っていたら子どもたちが、笑ってお金を返したりしているそうです。
この日は、ちょうどインターンの大学生が店番のサポートをしていたので、
一緒に写真を撮ってもいいですか?と聞いてみると、
「孫より若い男性の隣なんて、うれしいわぁ」と、
目がにこ〜っとして、表情がほぐれていきました。
大学生も照れ笑い。
駄菓子屋さんを開設したいと他の施設からの見学者も絶えないようですが、
実際にオープンまでこぎつけるところはそれほど多くないといいます。
ネックになるのが「施錠扉」の問題。
認知症の人を受け入れる施設では、徘徊して事故にあったりすることを防ぐため、
扉を施錠しているところが多く、「駄菓子屋さん」の来店者がくるたびに、
仕事を中断して鍵を開けるわけにはいかないという結論に至るのだそうです。
そんなに子どもがくるの?と疑問に思うかもしれませんが、
浦安の場合、1日に200人以上が来店することもあるのです!
毎回チャイムが鳴るたびに、鍵を開けると確かに業務に支障が出てしまいます。
「銀木犀」は、入居者も自由に出入りしてもらう「自然な暮らし」を目指しています。
つまり、鍵をかけなくても「自分の家」として
安心して過ごせる工夫がさまざまにあるということです。
私が住み替えたいくらいおしゃれで、木のぬくもりを感じて寛げる施設なのですが、
認知症の母(要介護4)を住まわせることができたか?と言ったら、
正直難しかったのではないかと思います。
「銀木犀」は認知症の人でも受け入れていますが、
母の状態を考えると、安全管理も施設選びの基準のひとつでした。
鍵をかけない施設の方針を十分に理解している人(と家族)しか入居できません。
比較的元気な人を受け入れているのかと思ったのですが、
「銀木犀」は、要介護5の寝たきりの人も入居できます。
一般的に施設での看取りは2〜3割ですが、
「銀木犀」は7割近い人を看取っています。
実はここに一番驚きました。
スタッフも多くの「看取り」を経験し、
自然なこととして対応できる力がついてきたといいます。
「銀木犀」は、身近なところから消えつつある「子どもたちのたまり場」と
「看取り」を生活の場に取り戻しているのです。
運営会社シルバーウッドの本間さん、案内ありがとうございます。
ご近所に「
銀木犀」がある方、駄菓子を買いに行ってみてください。
「駄菓子屋さん」、私も真似したくなりました。
リアカーで「駄菓子屋さん」をやろうかなぁ。