朝、食事を終えて歯磨きが終わった母は、
デイサービスのお迎えがくるから、靴を履きたい、ザックを背負いたいという、スイッチが入ってしまいます。気を紛らすタイミングでやってもらうのが、
食器ふきです。
「私が洗う人をやるから、ふく人をお願い」
と頼むと、何をしたらいいか分からないでいるので、ほぼ引き受けてくれます。
機嫌のいいときは「助かる〜?」と母が聞いてくるので、
「助かるなんてもんじゃないよ!ありがたや、ありがたや、だよ」と感情を伝え、
「ごはんを作って洗って、ふいたら時間が倍かかる。洗いながらふいてくれるから時間が短縮できていいよ」と理屈を添えます。
私が話しているうちに、母はおそらく状況を頭の中で整理するのだと思います。
気分も悪いはずがありません。
「そう? ごはんを作って洗う人の方が大変よね」と、会話に私への気遣いが出てくるときは、すごくいいとき。
「(食器を)洗う人あれば、ふく人ありだね、昔の人は、二人三脚とかうまいこと言ったよね」と、
リズムのいい言葉で返し、
昔の人はエライというオチにします。
これはあらゆる場面で使えます。
そうすると「昔の人は物が何もなかったのにエライね」と、母なりに色をつけて返してきます。
機嫌の悪いときは下手に出ます。
「疲れてると思うけと、食器ふける?」
と促せばすんなり。
口数が少ないときでも
「褒めを上塗り」をしておくと、脳の片隅では聞いていて、言葉は届いているのだと思います。繰り返し伝えた言葉は、ある日、 母の言葉になって出てくるのです。
余った豚肉、トマトの卵炒め。
茹でたパプリカ、小松菜と一緒に。
味付けするのは、一品あればいいようです。