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映画「ある精肉店のはなし」を観てきた

先日、ポレポレ東中野で上映中の映画『ある精肉店のはなし』を観てきた。
大阪市貝塚市で牛を育てて、屠畜し、さばいて販売してきた北出精肉店の映画だ。
家業を継いで7代目。休みなんてとることなく、一年中、額に汗をかいて
食肉の仕事に携わってきた家族の物語。
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大事に育ててきた牛を自分たちで屠畜し、59歳の長男新司さんと
58歳の次男昭さんを中心に、女もできる仕事を分担し、
黙々と解体していく様子は、神々しい光を放っていた。

牛の解体シーンから始まるので、ちょっとドキっとするが
精肉店の家族の営みを見ているうちに、気持ちがなだらかになる。
特に、店とつながっている台所がいい。

台所を預かるのは62歳の長女。
家族が交代で仕事の手を休め、長女の澄子さんが作った昼食をとりにくる。
台所の片隅にある指定席のソファで、おばあちゃんが新聞を読む。
休日は、肩と肩がくっつく小さな食卓に一家が集まり、焼肉を食べる。
北出家の台所は生きている。

屠場の閉鎖が決まり、牛を飼うのをやめた後、昭さんは
現実を受け入れ、牛の皮を生かせる太鼓屋になった。
「地域の文化をつないでいきたい」と瞳を輝かせ、汗をぬぐう。
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▲映画館に展示されている牛の皮

公然と差別を受けてきた歴史についても兄妹が静かに語る。
部落解放運動をし、「水平社宣言」と出会ったことで
人としての誇りを取り戻していったことが想像できる。
そして、盆踊りは、部落差別の抑圧から心を解放するものだった。

すべてをさらけ出す映画に出ることは、相当な覚悟があったに違いない。
北出さんが語らないことや、映画に描かれなかったところに
イマジネーションが働くドキュメンタリーだった。

「表現の貧しさは、文字と共に奪われてきたとぼくは思ってるんです。
いかに自分の思いを適切な言葉で表現するかは、教育の中で培うこと」
「もちろん差別をするのは相手ですが、そこを変えるためには
自らの体質を変えていくこと。それが解放運動の一番大事なところなんやと思う」
パンフレットの対談にある、こんな言葉が印象に残る。

「語らない映画」と「語るパンフ」。これはセットだと思う。
「ある精肉店のはなし」のロングランが決定したということに、何よりも希望を感じた。
by shukas | 2014-01-21 23:21 | かんがえる | Comments(0)

食のクリエイター&ライター大久保朱夏の暮らし


by shukas
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