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沈丁花咲く、3月11日

昨日は、仕事と用事を済ませ、母のいる大森の老人ホームへ行ってきました。
途中で気が変わり、読みかけの本を読むために帰宅しようかと思ったのですが、
山手線で品川駅に到着したら、せっかく来たしと思い直して下車。
締め切りに追われていない、土曜の方が精神的に余裕があります。

大森駅からバスに乗り、池上通りを10分ほど行ったバス停「池上営業所」が最寄り駅。
バス停の目の前に、大きな動物病院があり、
里親募集中の張り紙が、猫好きの私にささやきかけてくるのです。
あの仔猫はもらわれたかな?と思いながら立ち止まり、
あー、まだ里親が見つからないんだ、写真よりずいぶん大きくなっただろうなと
見知らぬ猫のことを考えながら、ローソンへ。
そこで母に差し入れするヨーグルトと自分のおやつのプリンを買い、
横断歩道を渡り、神社の参道を通って母が暮らす施設を目指します。

チャイムを鳴らすと、上品な事務員が小走りで玄関まできて、
オートロックの解除をして、「こんにちは!」と明るい声で迎えてくれます。
受付で利用者である母の名前を書き、家族の欄に丸をつけ、自分の名前を書くと、
「Guest」の名札をくれます。それを首からかけてうがい・手洗いをして母がいるリビングへ。

風邪予防のためにマスクをしているのですが、私がきたことがわかると、
母は表情を変え、「あら〜!来てくれたの!」と喜んでくれます。
喜んでくれる日は穏やかで頭もクリアで「いいとき」です。
遠くからでも母をパッと見ればだいたい、そのときのコンディションは分かります。
沈丁花咲く、3月11日_d0122797_11513682.jpg



3月11日、東日本大震災から6年の日でした。
母は朝日新聞の見出しを声に出して読み、「何かあったのね」と言いますが、東日本大震災のことはわからないようでした。
いまを生きています。辛いことを忘れてしまうのは幸せなことかもしれません。
2011年には母の様子がおかしい、アルツハイマー型認知症ではないかという疑いを深める出来事が続いたのですが、
原発も予断を許さない状況で、当時水戸に住んでいた妹と0歳と3歳の姪のことで頭がいっぱいでした。
母にはテレビを消すようにと、電話した記憶しかありません。

昨日は母からも「ここは緑や花がたくさんある」とかいろいろな話をしてきたので、
1時間半ほど一緒に過ごすことができました。
「あー、話したいことがあって、モヤモヤしてたからスッキリしたわ」と言います。
「朱夏さんもそんなことってない?」と続けて、質問してきたので、本当に「いい日」でした。
話題に脈絡はありませんが、たくさん話してスッキリしたのは事実でしょう。 
相手のことを想像できるのはいい状態です。
「朱夏さんと知り合いになったのは、夫が亡くなってからよね?」と言うので、
「まさかー!!それだと私が産まれる訳ないでしょ」と心の中でツッコミを入れつつ「そうかな?いつ出会ったか忘れてしまったけど、
長い付き合いな気がするよ」とボケておきました。

帰るときは「買い物をしてくるね、いってきまーす」と明るく話しかけて出るようにしています。
施設の庭に咲いた沈丁花が、母がよく座る席に生けてありました。


沈丁花咲く、3月11日_d0122797_12165214.jpg
帰り道、神社の参道にあるどこかの家からコロッケの匂いがしてきました。

by shukas | 2017-03-12 11:49 | つぶやき | Comments(0)

フードライター大久保朱夏の暮らし


by shukas
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